第二次大戦前の雇用について、もっとも顕著な事実は、農業人口の驚くほどの固定化であった。一九二〇年、三〇年、四〇年と三回おこなわれた国勢調査によれば、農業人口はいずれも一三七〇万人から一三四〇万人のあいたに固定している。農家の出生率はこの固定した農業人口の維持を上回るものであったから、農業は農業外に人口を排出していたことになる。一九二〇年から三〇年にかけては、第三次産業が急増してこうした人口の受け皿となり、「全部雇用」が実現した。
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一九三〇年から四〇年にかけては、戦時生産力増強のため軍需産業が膨張し、増加した労働人口の大部分を吸収した。戦後、雇用構造は大きく変わった。敗戦によって第二次産業が崩壊し、その就業人口が激減した。雇用を増やしたのは第三次産業とりわけ公務員であったが、その数は多くはなかった。就業人口増加の大部分を吸収したのは農業であった。戦前は農業外に流出していた農家の次三男および娘がその流出速度を弱めて農業に滞留したのである。過剰な人口をかかえた農業の限界労働生産性は、はなはだ貧しいものとなった。農業における潜在的失業量、不完全就業量は増加した。農業においても比較的大規模な農家では完全就労が実現しているが、底辺では潜在的失業、不完全就労が存在している。農業において労働市場の二重性が成立しているのである。